― 現役トレーナーが語る、本当のしつけの話 ―
しつけ教室、YouTube、雑誌、SNS。
色々試した。色々聞いた。先生も何人か変えてみた。
でも、愛犬の問題が一向に解決しない——。
そんな悩みを抱えた飼い主さんが、私のところに本当によく来られます。
「散歩の度に引っ張られて、肩が痛い」
「他の犬を見ると吠えまくって、外を歩くのが憂鬱」
「インターホンが鳴ると大騒ぎで、宅配便も受け取れない」
そういう本気で困っている飼い主さんに、今日は届けたい話があります。
01
しつけは「出来る事を伸ばす」ではなく、「出来ない事を減らす」
まず、根本的な所からお話しします。
多くのしつけ教室では、「出来た事を褒める」事に重きが置かれます。確かに、最初の段階ではそれが大事です。たまたま出来た瞬間を逃さず褒める。それで犬は「あ、これでいいんだ」と学習します。
でも、いつまでも「出来る事を褒める」だけでは、実は何も教えていないのと同じなんです。
犬がもう出来る事を何度褒めた所で、本当に困っている問題は何一つ進みません。
しつけの本質は、「出来ない事を減らしていく」事です。
引っ張る、吠える、噛む。そういった「困っている行動」を減らしていく。その為には、ただ褒めるだけでは絶対に届かない領域があります。
02
「お座り」一つで、ほとんどの問題は解決します
散歩で引っ張る。他の犬を見て吠える。インターホンで大騒ぎする。
実はこれら、「お座り」や「待て」が『本当の意味で』出来る様になれば、ほぼ全部解決します。
ここで言う「本当の意味で」とは、ゴハンやおやつの前に出来ると言ったレベルではありません。
他の犬が近づいて来ても座っていられる。インターホンが鳴っても飼い主の前で待っていられる。興奮していても、嫌な事があっても、それでも指示を守れる。それが「本当の意味で出来る」という事です。
つまり、「家ではお座り出来る」という”出来る事”を伸ばすのではなく、「興奮すると座れない」「他の犬を見ると待てなくなる」という”出来ない事”を減らしていく——これが本質です。
「えっ、それって難しそう」と思いますよね。でも、ここを越えられたら、生活は劇的に変わります。
ところが、多くの飼い主さんはこう言います。
飼い主さんの声
「家ではお座り出来るんですけど、外だと座らなくて」
「他の犬が近づいて来ると、立ち上がっちゃうんです」
「マグネット(飼い主の手に犬が鼻先を付けて視線を集中させる技)も、相手が近づくと解除されちゃって」
そして、しつけ教室ではこう言われます。「もっと簡単な状況で強化しましょう」「おやつをあげるタイミングが遅いです」「もっと犬の目の前におやつを持ってきて」——つまり、「出来なかったのはママのせい」という事です。
でも、本当の問題は別の所にあります。それは、「ダメな事はダメ」と教えていない事。タイミングやおやつの位置の問題の前に、犬が「これはやってはいけない事なんだ」と理解していなければ、何度練習しても同じです。
「ママのせい」と言われ続けて、毎日おやつのタイミングを練習している飼い主さんを、何人も見てきました。でも、飼い主さんは、もう十分頑張っています。足りないのは飼い主さんの技術ではなく、犬に「NO」を伝える、たった一つの覚悟かもしれません。
03
犬を、ちょっと舐めすぎていませんか
ここからが、今日一番伝えたい話です。
世間では、犬を「繊細で傷つきやすい存在」として扱う風潮があります。
でも、犬はそんなに弱い生き物ではありません。
犬は、本当に頭がいい生き物です。
例えば、競技会の世界ではこんな事があります。
リンクの外(練習場所)ではご褒美が貰えるから一生懸命やる。でもリンクの中(本番)ではご褒美が貰えないから、手を抜く。
犬はそこまで状況を見極めて、行動を使い分けるんです。
人間に対してもそうです。「この人には本気を出さなくても大丈夫」「この人とはそりゃあちゃんとやるでしょ」と、相手によって態度を変えます。
つまり——お家であなたに言う事を聞かない犬は、「あなたなら言う事を聞かなくても許してくれる」と判断しているという事です。
これは犬が悪いのではありません。賢いからこそ、合理的に判断しているだけです。
04
「ちょっと叱ったら信頼関係が崩れる」は、本当でしょうか
よく聞く話があります。
よく聞く主張
「叱ると犬との信頼関係が崩れますよ」
「もっとママを好きになれば、犬は嬉々として動いてくれます」
「好きじゃないからやらないんです」
——本当にそうでしょうか。
そうは思いません。
犬は、もう十分にあなたの事が大好きです。
それは大前提です。あんなに毎日顔を見て、ご飯を貰って、散歩に連れて行って貰っている。好きじゃない訳がありません。
でも、好きと言う事を聞くは、別の話なんです。
好きな相手の言う事を、人間だって全部聞きますか?聞きませんよね。
「好きだけど、これは嫌」「好きだけど、面倒臭い」——そういう感情を、犬もちゃんと持っています。
05
「あなたはあなたのままでいいよ」は、本当に犬への愛なのでしょうか
優しい言葉に聞こえるけれど
「もっと美味しいおやつを準備すれば、きっとやってくれます」
「気が向かない時は、無理させなくていいですよ」
「あなたはあなたのままでいいよ」
聞こえはとても優しい言葉です。
でも、これって本当に犬の為でしょうか。
犬の立場から見ると、こういう事です。
「我慢するの嫌だな。あ、我慢しなくてもいいんだ。気が向いたらやればいいんだ。気が向かなければ、もっと美味しいおやつくれるんだ」
これでは、犬は何も学べません。
そして犬は学習します。「自分のままでいい。頑張る必要は無い。」と。
でも、犬は本当はもっと出来る生き物です。
「ここまで出来る自分」「頑張れる自分」を知った犬の目は、本当に輝いています。
「あなたのままでいい」と言って成長の機会を奪う事は、優しさではなく、犬の可能性を諦める事ではないでしょうか。
06
本気で変えたい飼い主さんへ
長くなりましたが、最後に。
愛犬の問題行動で本気で困っているなら、まず「犬を弱い存在として扱う」のをやめてみて下さい。
犬は賢い。
犬は強い。
犬はあなたが思う以上に、頑張れる。
そして、「ダメな事はダメ」と教える事は、犬への愛情です。
「あなたはあなたのままでいい」と言って甘やかし続ける事が、本当の愛ではないと信じています。
しつけ教室を渡り歩いても解決しなかった問題は、もしかしたら「方法」ではなく「方向性」が違っていただけかもしれません。
でも、犬は変われます。
そして、飼い主さんとの関係も、ちゃんと変わっていきます。
本気で愛犬を変えたい方は、是非一度ご相談下さい。
🐾
犬は賢い。犬は強い。
あなたが思う以上に、頑張れる。
その可能性を、信じてあげて下さい。